FA電気設計を行う上で当然必要になるのが電気回路の理解です。電気回路を理解した上で、機械を動かすためにどのような部品構成が必要かを考えながら設計をします。今回はこの電気回路と主要部品を簡単に解説します。
電気回路とは?
電気回路は電気の通り道を表したものです。単純な例では電源+側⇒スイッチ⇒負荷⇒電源-側といった具合に接続されます。
そして電気が流れるためには「電源」と「導線」と「負荷」の3つが必要です。
• 電源
電気を供給する部分。例えば、乾電池やコンセントです。FA電気設計では乾電池の代わりに直流電源(スイッチング電源)を使用します。
• 導線
電気が通る道になります。銅などの電気を通しやすい金属が使われ、一般に電線やケーブルを指します。
• 負荷
電気を消費する部分です。電球やモーター、ヒーターなど、電気を使って動かすものが「負荷」にあたります。
これらがすべて正しく接続されていないと、電気がうまく流れず、負荷は働きません。身近な例を挙げてみると、どこの家にもあるコンセント(電源)に扇風機のコンセントプラグ(導線)を接続し、羽根(負荷)が回転して風を送るという流れです。
電源と負荷の間にスイッチがあれば、ON/OFFにより扇風機が送風したり停止したりします。電気回路設計ではこのスイッチのような役割を使って色々な制御を実現することが出来ます。
設計の為に必要な基礎知識
電気設計に必要な最低限の知識について解説します。
回路図記号
図記号を覚えないと回路図を書くことが出来ません。徐々に覚えていきましょう。
交流回路(AC)
工場内設備に供給される電源はAC200VやAC100V等の交流電源です。モーターやヒーター等の交流負荷やその他搭載する交流入力電圧機器の電源として使用します。家庭ではコンセントが交流電源(主にAC100V)で、扇風機やトースターなどが交流負荷に当たります。
直流回路(DC)
コードレス掃除機や玩具等、電池を使用する機器は直流回路で構成されています。電気自動車等の例外を除き、比較的小さな電力で駆動可能な機器が対象になります。又工場内FA機器において動作用の指示系統となる制御回路電源には主として直流電源が使用され、工場内設備に供給された交流電圧から直流電圧へ変換するスイッチング電源といわれる部品を使用します。スイッチング電源は入力端子に交流電圧を印可しすると出力端子に直流電圧を出力します。出力する直流電圧はDC24Vが多く使われています。
オームの法則
V(電圧) = I(電流)×R(抵抗)
「なんだ。結局教科書通りか。」と思われるかも知れませんが、流石にこれだけは覚えて欲しいです。機器選定の際に負荷容量や電流値の算出が欠かせない為です。
トランジスタNPN出力
これも拒否反応が出るかも知れませんが、トランジスタ出力は各種センサを使用する際によく出て来ます。覚えて欲しいのはスイッチング回路です。ベース-エミッタ間に電流が流れるとコレクタ-エミッタ間がONになり、コレクタ端子に接続されている負荷がONになると覚えておいて下さい。
FA電気設計で使用される主な部品
FA電気設計をする為の第一歩として、実際によく使用される部品例を挙げます。
ブレーカー
供給電源をON/OFFします。選定する機器により漏電や過電流検出時にも遮断される為、安全のためにも必ず設置します。
スイッチング電源
FA関連設備では各種制御機器に主としてDC24Vを供給する必要がありますが、設備への供給電源はAC100VやAC200Vが多いです。スイッチング電源は供給電源電圧を入力するとDC電圧を出力します。
スイッチング電源にはDC24Vの他にもDC15VやDC5Vといった出力仕様のものもあります。
スイッチ
ON/OFFすることで電気の通り道を制御します。電源のON/OFFや装置の運転スタート/ストップ等、制御用にも使用します。ボタンを押して接点がONするもの(ノーマリオープン:NO)とボタンを押して接点がOFFするもの(ノーマリクローズ:NC)があります。
以下、一般的に使用されているスイッチ一例を挙げます。
- モーメンタリスイッチ
ボタンを押すと接点がONし、ボタンを離すと接点がOFFします。起動、停止ボタンなどに使用されます。 - オルタネイトスイッチ
ボタンを押す度に接点ONとOFFを繰り返します。電源ON用などに使用されます。 - セレクタスイッチ
自動運転/手動操作のように決まった操作を切り替えて選択する際に使用します。 - 照光スイッチ
スイッチとランプがセットになっているもので、スイッチ自体が点灯します。
センサ
部品の有無を検出したり、温度や圧力を測定し、その結果を出力します。
PLC
作成したラダープログラムによりスイッチやセンサの状況を把握し装置制御を行う、FA電気設計において最も重要な部品で、シーケンサとも呼ばれます。ラダープログラムの作成にはパソコンにインストールしたPLCソフトが必要になります。(三菱電機、キーエンス、オムロンなど)
リレー
コイルに通電することで接点がON/OFFします。スイッチが手動によるON/OFF操作だとすると、リレーはPLCの指令等を使って自動でON/OFFする場合に使用します。
ランプ
点灯色や点灯/点滅制御などで現在の状態を表します。
タッチパネル
最近では飲食店でもよく見かけますが、ランプだけでは表しきれない状態表示や制御が必要な場合は、自動設備でもタッチパネルを使用します。タッチパネル内に配置したスイッチにより装置のコントロールを行ったり、数値入力や表示、メッセージの表示など、搭載された様々な機能を使って装置を分かり易く取り扱うことが出来ます。画面データはパソコンにインストールされた画像作成ソフトが必要です。(三菱電機、キーエンス、オムロン、シュナイダーエレクトリックなど)
電磁弁
駆動系の装置はエアシリンダーを使用することが多いです。エアシリンダーは空気圧を使用して突出側/戻り側どちらかに動かす部品です。エアシリンダーをどちらに動かすのかを決定する為には電磁弁という部品を使用します。電磁弁に対する既定電圧印可の仕方で弁が切り替わり、どちらに動作するかを選択出来ます。AC/DCどちらでも駆動するタイプが用意されていますが、主にDC24Vで駆動することが多いです。
安全機器
工場生産ラインでは装置稼働中に作業者が危険個所に進入することも想定されます。その際即座に装置が停止するように非常停止スイッチやセーフティライトカーテンのような安全機器を使用し、作業者の安全を守ります。
端子台
制御盤への接続は端子台で行います。下記のような用途で使用します。
- 供給電源の接続
- 電制御盤外機器(センサやモーターなど)への接続
- 電源電圧(DC24Vなど)の分配
電気回路図の作成について
電気回路図の作成について、現在はパソコンのCADソフトで作成されることが殆どです。CADソフトには電気設計用のものもあり、図記号等がインストールされていて効率よく設計出来る機能が搭載されているものもありますが、そうでなくとも手書きで作成するよりは数段楽に作成出来ます。フリーソフトもありますので、本格的に設計をする場合は導入をお勧めします。
供給電源からブレーカー、各種機器への接続を大まかに配置、それぞれの機器の取扱説明書を参照すれば接続図も掲載されています。
・AC電源⇒ブレーカー⇒AC負荷(モーター、スイッチング電源(DC24V出力)、PLCなど)
・DC電源⇒DC24V負荷(リレー、ランプ、電磁弁など)
下図は端子台にAC100V電源を接続してブレーカーをONするとスイッチング電源入力端子にAC100Vが供給され、スイッチング電源出力端子から端子台へDC24V負荷用の電圧が供給されるという単純な回路です。
まとめ
この記事ではFA電気設計における「電気回路」の基本について簡単に説明しました。次回はFA電気設計で最も重要な「PLC(プログラマブルロジックコントローラー)」について、より詳しく解説していきます。それでは!