PLCのラダープログラムでは、データメモリ(アドレス先頭記号:D又はDM)を使用して数値や状態を保存することが出来ます。データメモリを活用することでシステムを効率良く運用することが出来ます。
本記事ではデータメモリの基本的な使い方や設定方法を解説し、活用例も紹介します。初心者でも理解しやすい内容を心がけているので、参考にして頂ければと思います。
データメモリとは?
データメモリはPLC内部の特定の領域で、以下のようなデータを保存するために使用します。
- 数値データ:カウンタ値、計算値等の各種データ
- 状態フラグ:ON/OFF状態や条件の記録
- 設定値:タイマーの設定値など
データメモリはシステム設定により、電源OFF状態でもデータを保持できる為、運転記録や設定情報を記憶することで装置の運用に役立ちます。
使い方
データメモリの使い方について説明します。
割付アドレスを確認
メーカーの取扱説明書でデータメモリ割付アドレスの範囲を確認し、使用するアドレスを決定します。データメモリは装置の初期設定値(パラメータ)記憶用として使用することが多く、電源をOFFしてもデータが保持される必要がありますが、メーカーにより全てのデータメモリ(DM)が停電保持される場合と、システム設定により停電保持するアドレス範囲を指定する場合があります。
各メーカーのDM割付や停電保持、設定方法を事前によく確認しておきましょう。
数値の保存
データメモリは数値データを保存するために使用します。
例:D0に数値「10」を保存
活用例:生産数の記録
製品の生産数をカウントし、データメモリに保存します。
- 製品が完成する毎に入力「00」がON
以下のようなラダープログラムを作成します。
「INC」はインクリメント命令で、入力(この場合はW100)がONすると「D0」の数値に+1されます。
入力「01」をONすると「D0」の値が”ゼロ”になります。
※入力「00」を直接使用せず、PLS命令で受けてから「W100」を使用していますが、入力「00」を直接使用すると「00」がONしている間に「D0」が毎スキャン+1されてしまい、正確な製品カウントが出来ないためです。
入力「00」がONした最初の1スキャンだけをインクリメントする必要があります。
条件フラグの記録
特定の条件を満たした時にフラグを記録する場合にも使用します。
例:W100コイルOFF時はD0に「0」を転送、W100コイルON時はD0に「1」を転送
活用例:エラー履歴の保存
エラーが発生したときの状態をデータメモリに記録することで、トラブルシューティングが容易になります。
- 「W101」ON時(異常A発生時)「D0」に数値”1″を転送
- 「W102」ON時(異常B発生時)「D0」に数値”2″を転送
- 「W103」ON時(異常C発生時)「D0」に数値”3″を転送
- 「W104」ON時(異常D発生時)「D0」に数値”4″を転送
以下のようなラダープログラムを作成します。
設定値の間接指定
予めタイマー設定値にデータメモリを割り当てておくことで、タイマー設定値を間接的に指定することが出来ます。
例:タイマー(T1)設定値に「D0」を指定
「D0」にはタッチパネルや数値転送(MOV命令)で設定値を入力します。
※常時ON接点は専用接点として各メーカーで決まったアドレスが指定されています。
活用例:装置パラメータ設定値の変更
装置のタイマ設定値等、パラメータを変更します。
- 入力「00」ON時はタイマ設定値「D0」に”1秒”を転送
- 入力「01」ON時はタイマ設定値「D0」に”5秒”を転送
以下のようなラダープログラムを作成します。
注意点
アドレスの重複
プログラムで同じデータメモリアドレスを重複して使用すると、意図しない動作が発生する可能性があります。アドレス一覧表を作成して管理することが重要です。
メモリ不足
データメモリの使用量が多すぎると、PLCのメモリが不足する場合があります。必要最低限のアドレスでプログラム作成を心掛けましょう。
まとめ
PLCのラダープログラムにおいてデータメモリは効率的な設計を実現するために高頻度で活用されます。数値データや状態フラグ、設定値を管理できるため、複雑なシステムでも状況の把握や設定変更にも柔軟に対応することが出来ます。
適切なアドレス管理を行い、効果的に活用して信頼性の高いシステム設計を目指しましょう。
それでは!