最近はどこの飲食店でも使用されているタッチパネル。生産工場においてもタッチパネルは視認性向上や生産の効率化、作業ミス防止に役立ちます。本記事ではキーエンスのVT STUDIOというタッチパネルソフトを使用した設計手順について解説します。
要件の整理とタッチパネルの選定
仕様を明確化
- 操作画面が必要な設備の仕様を確認します。
- 作業者の要求事項(操作内容、表示内容など)を明確にします。
機種選定
- メーカーごとの特徴を確認し、画面サイズやグラフィック仕様を考慮して適切なタッチパネル型式を選定します。
VT STUDIOによる設計
タッチパネルの型式が確定したらソフトウェア「VT STUDIO」による設計をします。
初期設定
- VT STUDIOを立ち上げ、”ファイル”-“新規作成”又は”新規作成”マークをクリックします。
- タッチパネル機種を選択し、”PLC機種設定”をクリックします。
- 機種右側の▼をクリックします。
- “KV Nanoシリーズ”を選択して”OK”をクリックします。
パソコンとタッチパネル間の通信設定
VT STUDIOで設計したソフトデータをタッチパネルに転送する為の設定をします。
- “通信”-“通信設定”をクリックします。
- “USB”を選択して”OK”をクリックします。
PLCとの連携
PLCとの通信方式を選択
- CPU 直接接続
CPUユニットの通信ポートとタッチパネルを専用ケーブルで直接接続する方法です。 - バス接続
シーケンサーのベースユニットとタッチパネルを専用ケーブルで接続する方法です。 - Ethernet 接続
CPUユニット又はイーサネットユニットとLANケーブルで接続する方法です。 - シリアル通信(RS-232/RS-422) 接続
シリアルコミュニケーションユニットとタッチパネルを専用ケーブルで接続する方法です。
PLC/タッチパネルの通信設定
- PLC側通信設定
通信方式に合った通信設定をラダーソフトで行います。タッチパネルの通信パラメータに合わせた設定をする必要があり、詳細は使用するタッチパネルの取扱説明書で確認する必要があります。
- KV STUDIOの対象ファイルを開き、左側ツリーからPLC型式をダブルクリックしてユニットエディタを開きます。
- スクロールして”増設カセット”右側の”▼”をクリックします。
- “KV-N10L(RS-232C)”を選択します。
- 通信仕様が表示されるので”OK”をクリックします。
- PLC本体に通信ユニットを取り付けるために中央のカバーを取り外し、通信ユニットを取り付けます。
- タッチパネル側通信設定
使用するタッチパネルの取扱説明書を確認し、通信方式や使用するPLCのメーカーに合わせた設定を行います。
- “リソース”-“VT本体システム設定”-“PLC通信条件”をクリックします。
通信条件を確認し、”編集画面に戻る”をクリックします。(立ち上げ直後のPLC機種設定時に通信条件も設定されています。) - 双方の通信設定完了後、タッチパネルとPLC通信ユニット間に専用ケーブルを接続します。
※専用ケーブルはVT STUDIOの″ヘルプ″タブより参照出来る「PLC接続マニュアル」にて確認します。
アドレスマッピングの設計
- タッチパネル側で操作、表示する信号に使用するデータアドレスを決定し、必要なデータをリスト化します。
画面の作成(キーエンス製VT STUDIOにて)
画面構成を設計
- ホーム画面
全体の操作や監視が一目で分かるよう設計します。各操作画面や設定画面への移行スイッチの設置も検討します。 - 詳細画面
操作画面や設定画面構成を個々に設計します。
画面右側の使用部品を選択して配置し、プロパティでスタイルや銘板を設定します。部品サイズはドラッグで変更します。
操作用スイッチの配置と設定
- 部品選択後、タッチしやすいサイズにして配置します。
- スタート、ストップボタンは色分け(緑・赤など)して誤操作を防止します。
- スイッチをダブルクリックして機能(モーメンタリ/オルタネイト/ページ切替)を設定します。
- スイッチのアドレスを割り当てます。照光スイッチの場合はランプのアドレス割当、a接点/b接点の選択をします。
- “拡張”をクリックし、長押し(ONディレイ)設定をします。
数値入力(表示)の配置と設定
- “設定”タブにて数値表示アドレス(データメモリ)、小数点位置を決定します。
- “レンジ・警報”タブより入力値の範囲を設定し、範囲外の設定による誤動作を防止します。
- “キー入力”タブより”スイッチによる選択時にウィンドウ表示”にチェックを入れ、”設定”から”システムテンキー”を選択して数値入力時にテンキーが表示されるように設定します。
ウィンドウ画面の作成
- 確認ダイアログをウィンドウ画面で作成(“グローバルウィンドウ”-“新規画面”をクリック)、表示して操作ミスを防ぐ仕組みを取り入れます。
ウィンドウ画面の表示方法
作成したウィンドウ画面の表示方法を説明します。
- 左側ツリー下部の”システム設定”をクリックします。
- ″グローバル機能制御″-“設定”をクリックします。
- “追加”をクリックします。
- “ページ切替”をダブルクリックします。
- ページ切替右側の”▼”をクリックします。
- “グローバルウィンドウ表示”をクリックします。
- 各種設定をします。
- トリガビットデバイス
グローバルウィンドウ表示のトリガとなるPLCアドレスを指定します。 - 表示ON/OFF
指定したPLCアドレスのトリガによりグローバルウィンドウの表示/非表示を設定します。 - ウィンドウNo.
表示対象のウィンドウNo.を設定します。 - ウィンドウ表示位置指定
チェックを入れるとウィンドウ表示位置の座標を指定出来ます。
アラーム表示画面の設計
- アラームの種類と内容、発生した際のアドレスをリスト化します。
- アラーム項目とアラームランプを配置した画面を作成します。
- 特定のアドレスを表示画面選択用のアドレスとして登録し、アラーム発生時にはアラーム画面に自動移行するように設定します。
システム設定より”システムメモリエリア”を選択し、PLCと共通のデータメモリ(DM)アドレスを入力後、”切替ページ”にチェックを入れることで、PLC運用中に指定したDMアドレスに数値が書き込まれると、その数値の画面番号に自動移行します。
パラメータ設定画面の設計
- 装置に必要な初期設定データをリスト化します。
- 基本動作設定ボタンや数値入力を配置し、動作の選択やタイマー設定値を入力、保存出来る画面を作成します。
画面遷移の整理
- 階層が深くならないよう、メインメニューや戻るボタンを設置します。
- 親画面・サブ画面を分かりやすい構成にします。
画面データの転送
作成した画面データを転送します。
“通信”-“PC→VTデータ送信”-“全データ”をクリックします。
全データ転送後に画面を一部変更し、再度転送する際は”PC→VT画面データ差分送信”を選択すると、変更したデータのみを転送する為、転送時間が短縮されます。
設計後のテストとフィードバック
作成画面の検証
- PLCとタッチパネルが正常に通信していれば、タッチパネル上の操作がPLCに反映されます。
- 作成した画面を現場で試験運用し、操作性や使いやすさを確認します。
改善点の特定
- 作業者からのフィードバックを受け、ボタン配置や画面遷移を修正します。
- 通信エラーや操作ミスの原因を解析して改善します。
本番運用
- 設計したソフトを実稼働に投入し、運用開始後も定期的に評価を行います。
- 適宜、画面ソフトを改善、修正します。
まとめ
タッチパネルソフト設計は、細かな手順を積み重ねることで現場の生産性向上や安全性確保に大きく貢献します。現場の声を反映させた設計を心がけ、多様なニーズに対応していきましょう。
この先は徐々にステップアップ出来るように応用的な記事を作成します。
先ずは下記の記事が参考になれば幸いです。それでは!

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